アニマルセラピーとは?犬や猫たちがもたらす癒しの効果を解説。

アニマル・セラピーは、正式には「動物介在療法(animal assisted therapy)」のこと。
病気の動物自体を治療する「ペット・セラピー」とは区別されます。
犬や猫のほか、ウサギ、馬、イルカなど、さまざまな動物たちが、患者の治療や子供の教育などに介入します。
このアニマル・セラピーは、どのような「癒しの効果」をもたらすのでしょうか?
いっしょに見ていきましょう。
アニマルセラピーとは?
アニマル・セラピーの対象は、多岐にわたります。
まとめてみましょう。
- 高齢者:独居・施設
- ホスピス(終末期医療)の患者:がん・エイズなど
- 児童:不登校・いじめ・虐待・1人っ子・親がいないなど
- 障がい者:身体・知的・精神
- 矯正施設(刑務所):犯罪傾向のある人・受刑者
- 一般の家庭・学校:一般の児童
「動物介在療法(animal assisted therapy)」は、動物と単に触れ合うだけの「動物介在活動(animal assisted activity)」とは異なり、明確な目的のもと、治療上のどこかの部分で動物たちを参加させます。
しっかりトレーニングされた動物たちは、医師や看護師、理学療法士、教育者などと共に治療に関わるれっきとした「セラピスト」と言えるでしょう。
では動物たちはどのような方法で関わるのでしょうか?
- 施設訪問タイプ:施設(高齢者・障がい者)や病院(小児・ホスピス・精神科など)を訪問する。
- 施設飼育タイプ:各種施設において動物を飼育する。
- 在宅訪問タイプ:独居や自分では動物を飼えない高齢者の自宅を訪問する。
- 在宅飼育タイプ:各家庭で動物を飼育する。
- 屋外活動タイプ:乗馬療法(一部訪問タイプも)・イルカ療法など。
このようにさまざまな介入方法がありますが、それぞれに一長一短があります。
次の項で詳しくお話しましょう。
犬や猫たちがもたらす効果を解説しよう
では、アニマル・セラピーは具体的にどのような効果をもたらすのでしょうか?
動物との接触により「温もり」を感じ、「受容されている感覚」を得ることができます。
これらをきっかけにさまざまな変化が起こります。
- リラックス効果:血圧の安定・コレステロール値の減少・痛みの緩和・筋緊張の低下
- 身体・精神機能の改善:筋力低下・関節拘縮の改善・認知症症状の改善
- リハビリテーション効果:ADL(日常生活活動)の拡大(動物の世話のため活動量が増加する)
【心理的効果】
- モチベーションの向上:活動欲求の高まり・病気や障がいを克服しようとする気持ち
- 心理的充足:自尊心・有用感・達成感・安心感の充足
- 感情表出の促進:言語的・非言語的表出の活性化
- 教育的効果:責任感や自立心の育成・自信の回復
【社会的効果】
- 人間関係の構築・強化:協力関係の構築
- 人間関係の円滑化:他者との関係づくり
- 身体的・社会的自立の支援:盲導犬・聴導犬・介助犬など
生理・心理・社会の各側面はそれぞれ密接に関わり合っていますね。
そしてそれぞれが相乗効果を生んでいきます。
犬や猫、ウサギといった身近な存在が中心ですね。
一般の家庭でも、動物を飼うことで、子どもによい影響を与えます。
責任感を育てるとともに、他者の痛みを知ることで、思いやりの心も育つようになるでしょう。
一方、特別な設備が必要で活動場所も限られる「乗馬療法」や「イルカ療法」は決して一般的とは言えませんが、その有効性が示されています。
「乗馬療法」では、屋外で活動する解放感はもちろんのこと、大きな動物とコミュニケーションを図り、自在に操ることで自信を回復させ、達成感をもたらします。
身体的にも股関節などの可動域を無理なく広げ、下肢や体幹の筋力向上にもつながります。
「イルカ療法」でも、特殊な効果が報告されています。
泳ぐことで、心身の緊張がほぐれ、体力が向上するという効果だけではないようです。
イルカは患者や障がい者を見分け、一緒に泳ぐことで病を癒すとも言われます。
高い知能を持ち、人を思いやる心を持ったイルカは、超能力の持ち主と呼べるかもしれませんね。
活躍する動物たちは?
やはり犬や猫たちが最も一般的ですね。
「犬」は、使役犬(猟犬・番犬・牧羊犬など)、愛玩犬として人とともに暮らしてきた長い歴史があります。
また人の気持ちを察し、状況判断ができるところに最大の特徴がありますね。
たくさんのセラピードッグとして多くの犬種がアニマル・セラピーに関わっています。
「猫」も「癒し手」として優秀な存在。
特に性格が穏やかで毛並みの美しい猫たちが人気。
ラグドール、ヒマラヤン、メインクーン、ノルウェージャンフォレストキャットなどが有名ですね。
また猫は単に可愛いだけではありませんよ。
あの「ゴロゴロ音」も人を癒す可能性があることが指摘されています。
犬とは違ったまた別の能力も持っているようです。
そのほか、身近な存在として「ウサギ」が挙げられます。
日本人にはとてもなじみ深い動物ですね。
なかでも、人によく馴れ、スキンシップが大好きなホーランドロップがその代表種です。
アニマル・セラピーの問題点は?
しかしアニマル・セラピーも「いい事ずくめ」というわけにはいかないようです。
その問題点も理解しておきましょう。
- 施設訪問タイプ:感染やアレルギーのリスク・動物に対する好き嫌い・頻度が少ない
- 施設飼育タイプ:スタッフの負担増
- 在宅訪問タイプ:対象者が限られる・頻度が少ない
- 在宅飼育タイプ:動物を亡くしたときのペットロスが大きい・飼い主亡き後の不安
- 屋外活動タイプ:大がかりな設備が必要・採算が合わない
いかがでしたか?
動物たちは、人間にとってかけがえのない家族の一員でありパートナー。
そして「無条件の愛情」を与えてくれる、優れたセラピスト、ヒーラー(癒やし手)でもあるんですね。
本稿が、あなたのペットライフのお役に立てれば幸いです。