猫の口臭の原因は5つの病気から。その改善と予防の対策法をくわしく解説。

愛猫の口臭がひどい。
その原因は、口の中だけとは限りません。
今回は、考えられる5つの病気の可能性についてお話しましょう。
また改善のために必要な対策や予防に有効なケアについて解説しましょう。
猫の口臭の原因は5つの病気から?
猫の口臭の原因でまず考えなければならないのはやはり口の中の異変でしょう。
口の中の細菌が異常に増殖することが一つの原因ですね。
考えられる病気には以下のものがあげられます。
- 歯周病(歯肉炎・歯周炎):歯垢・歯石がたまっている。歯肉が炎症を起こす。歯がぐらつく。
- ウィルス感染症:猫カリシウィルス感染症、猫ウィルス性鼻気管炎、猫クラミジア感染症など。
歯周病を引き起こしている細菌は、歯肉から血液に入り、全身に運ばれます。
そして腎臓や心臓など、離れた臓器に影響を及ぼすと言われるため注意が必要です。
またウィルス感染している猫は「口腔内の環境」が悪化し、細菌が増殖しやすくなります。
そのため歯周病にもかかりやすくなってしまいます。
これら口の中と全身性の病気は実は密接に結びついているんです。
一方、その他の病気が原因となって、口のニオイに異常を感じることもあります。
- 糖尿病:糖の代謝障害。発生した老廃物(ケトン体)が「ケトン臭(甘酸っぱいニオイ)」を発する。
- 腎不全(尿毒症):体内の老廃物(アンモニアなど)が排出できない病気。「アンモニア臭」を発する。
- 巨大結腸症:大腸(結腸)が拡張して便が排出できなくなる病気。「便臭を伴う口臭」を発する。
これらの病気ではケトン臭(アセトン臭とも)やアンモニア臭、便臭といった特殊なニオイが感じられるでしょう。
改善と予防の対策をくわしく解説!
それでは、5つの病気についてみていきましょう。
原因や症状、改善や予防のための対策もまとめてみますよ。
口臭以外にも、病気にまつわるさまざまな症状が同時に表れているかもしれません。
併せて考えてみましょう。
歯周病は万病のもと
- 原因:歯垢・歯石が沈着する。ウィルス感染により口内環境が悪化する。細菌が増殖して毒素が発生する。
- 症状:歯肉が炎症を起こして赤く腫れる。化膿して口臭のもとになる。歯周炎に進行して歯が抜ける。
- 症状(行動):よだれが多くなる。口をくちゃくちゃする。痛みのために食べにくそうにする。
- 改善策(治療):歯垢を除去する。歯石除去手術を行う。抗生物質・消炎剤を投与する。
- 予防策(ケア):口腔内のチェック。歯垢の段階でブラッシングなどで除去する(歯石に変化すると困難)。
歯周病が原因で、腎臓や心臓など離れた臓器に影響を与える可能性があるのは先にお話しした通りです。
また口の中の痛みでうまく食べられなかったり、歯を失ったりすることで食欲不振に陥ることが考えられます。
猫にとって大きなストレスになることから、抵抗力が低下し、他の病気を併発するリスクを高めてしまいます。
まさに万病のもとです。
口の中を開け、赤味や腫れ、出血などがないか、日ごろからチェックを行いましょう。
またブラッシングなどの口腔ケアを怠らないようにしましょう。
難しい場合は歯垢を溶かす「歯磨きスプレー」や歯磨き効果の期待できる「歯磨きスナック」も市販されています。
適宜使用するとよいでしょう。
ウィルス感染症で口内環境が悪化
- 原因:ウィルスの感染による。猫伝染性呼吸症候群(猫風邪)。
- 症状:くしゃみ、濃い鼻水や目やに、食欲不振、下痢、発熱、結膜炎など。
- 改善策(治療):猫インターフェロンや抗生物質の投与。
- 予防策(ケア):感染猫に触れさせない。冬季は乾燥を避ける。体力の維持。
猫カリシウィルス感染症、猫ウィルス性鼻気管炎、猫クラミジア感染症は、合わせて「猫伝染性呼吸症候群(猫風邪)」と呼ばれます。
これらは風邪の症状だけでなく、口内環境を悪化させ、歯周病の原因になったり悪化させたりします。
またウィルス感染症には、「猫白血病ウィルス感染症」や「猫免疫不全ウィルス感染症(猫エイズ)」もあります。
いずれも体の抵抗力が低下することでさまざまな続発性の病気を引き起こします。
糖尿病の原因は肥満だけではない
- 病態:膵臓のインスリン(ホルモン)が不足することで糖が代謝されなくなる病気。
- 症状:他飲多尿。食欲亢進。体重減少。白内障や腎臓障害、神経障害などの合併症。けいれんや昏睡。
- 原因:遺伝性(Ⅰ型糖尿病)。ステロイド剤(糖質コルチコイドが血糖を高める)の過剰投与。肥満。ストレスなど。
- 改善策(治療):食事療法(特にⅡ型)。インスリンの長期投与(特にⅠ型)。
- 予防策(ケア):食事管理。ステロイド剤の過剰投与を避ける(ドクターショッピングをしない)。
ケトン臭(甘酸っぱいニオイ)は口臭だけでなく体臭として感じることもあります。
糖尿病は太りすぎ(カロリー過多)だけが原因ではありません。
遺伝のほか、アレルギー性疾患に用いられる「ステロイド剤」の過剰投与が指摘されることもあります。
また気付かずにいることで合併症のリスクを高めてしまいます。
しかし早期に発見できれば、食事療法(療法食)や投薬、インスリンなどでコントロールは可能です。
腎不全(尿毒症)は猫がかかりやすい病気
- 病態:腎臓の機能の3/4が失われて老廃物が尿として排出できなくなる病気。
- 症状:元気消失。食欲不振。他飲多尿(慢性)。尿量の減少(尿閉)。おう吐。脱水。けいれんや昏睡(尿毒症)。
- 原因:心臓病の合併症として。毒物の中毒。感染症。腫瘍。尿路結石。
- 改善策(治療):原因疾患の治療。慢性の場合は内服薬や療法食(たんぱく質、リン、ナトリウムの制限)など。
- 予防策(ケア):尿路結石の予防。水分の管理やミネラル分の過剰摂取を避ける。膀胱炎の早期治療など。
猫は砂漠地帯が発祥であるため、もともと飲水量・尿量が少なく、結石ができやすい動物です。
普段から飲水量に気を付け、食事や水のミネラル分も過剰にならないような配慮が必要です。
飲水量は体重あたり30~40mlとされています。
またミネラル(カルシウムやマグネシウムなど)の多いフードばかり与えるのは避けましょう。
また猫の好物というイメージがある煮干し、かつおぶし、牛乳(人間用)は、実はNGの食材。
結石のもとになるおそれがありますので控えましょう。
巨大結腸症では便秘が続く
- 病態:大腸の一部である結腸の弾力がなくなり、異常に拡張するため、便が押し出せなくなる病気。
- 症状:結腸に便が留まるため水分が吸収され、便が硬くなって出なくなる。体重減少。毛づやが悪くなる。
- 原因:遺伝的に腸管の一部が細くなっていることが多い。蝶の蠕動運動に関わる神経の障害も。
- 改善策(治療):軽症の場合は便秘への対応を行う。病院では下剤などの投与(軽度)や腸の洗浄、開腹術(重度)を行う。
- 予防策(ケア):食事療法(便秘の予防・改善)。
いかがでしたか?
愛猫の口のニオイが気になったら、決して放置してはいけません。
いつもと違うと感じたら要注意。
思わぬ病気にかかっている可能性もあります。
なるべく早く病院に連れて行きましょう。
この稿があなたの愛猫の健康のためにお役に立てれば幸いです。