犬の顔が腫れるのはなぜ?片方の形が変わるのは2つの原因から。

愛犬の顔が急に腫れた。
しかも片方の形が変わるほど。
とてもショッキングなことです。
これにはどのような原因が考えられるのでしょうか?
今回は、犬の顔が腫れる病気についてお話しましょう。
顔の片方の形が変わる2つの原因とは?
愛犬の顔の変化の原因は何なのでしょうか?
大きく分けると、2つのことが考えられます。
1つ目は、何らか原因で感染し、炎症が起こって、膿(うみ)がたまっているとき。
これは局所に起こる場合と他の場所から波及してくる(広がってくる)場合があります。
2つ目は、腫瘍ができているときです。
これには良性と悪性の腫瘍(がん)が考えられます。
それぞれのケースでさまざまな病気の可能性があります。
まずは簡単に整理してみましょう。
- 膿瘍:目や耳の周りを引っかいたときなどに細菌感染して、局所的に炎症・化膿を起こす。
- 歯周病(歯肉炎・歯周炎)や根尖周囲膿瘍:「目の下」や「ほっぺた」が膨らんでいるように見える。
- 感染の波及:歯周病や根尖周囲膿瘍の細菌が管を通して波及して「鼻」の中に炎症・化膿を起こす。
- 脂肪腫:患部がやわらかく腫れている(膨らんでいる)。触るとよく動く。良性の腫瘍。
- 口腔内腫瘍:「目の下」や「ほっぺた」が腫れている(膨らんでいる)。
- 鼻腔内腫瘍:鼻の中に扁平上皮がん、腺腫などができて「鼻」が腫れている(膨らんでいる)。
犬の顔が腫れる病気とは
それぞれの病気を順番にみていきましょう。
まず考えられるのは「膿瘍」です。
皮膚の病気があって顔の周りを頻繁に引っ掻いている。
また外で他の犬とケンカしたなどの事実があれば、注意して観察してみましょう。
一方、顔の表面のトラブルと思っていたら、実は口の中の病気だったということも少なくありません。
この場合、口臭やよだれがひどくなった。
食べるときの様子がおかしい(痛がる、顔を傾ける、食べこぼしが多いなど)。
口の周りを触られるのを嫌がるなど。
他の変化が同時に見られるかもしれません。
口の中を開け、腫れや赤み、出血などがないか観察してみましょう。
炎症・化膿が起きているとき
- 原因:外傷(引っ掻き傷など)をきっかけとした細菌感染によって「化膿性炎症」を起こす。
- 症状:組織にできた空洞に膿(うみ)がたまって患部(目や耳の周囲など)が腫れる
- 治療:切除術。排膿。抗生物質の投与など。
- 留意点:放置すると細菌が血管に入って全身の臓器(心臓・腎臓・肝臓など)に回る可能性がある。
- 原因:歯垢・歯石(歯垢にカルシウムが沈着したもの)の付着により口内に細菌感染が起きる。
- 口の症状:ひどい口臭やよだれ。歯の変色(黄・茶)。歯肉の炎症(歯肉炎)で赤く腫れる。歯周炎で歯がぐらつく。
- 顔の症状:目の下や頬が腫れる。口から鼻に通じる管を通って感染・炎症が鼻に波及すると鼻が腫れる。
- 治療:歯石除去手術(麻酔下)。抗生物質の投与。
- 留意点:歯垢(プラーク)のうちであればブッシングなどで除去できる。
- 原因:歯周病の悪化。歯が折れたり抜けたりしたあとの歯髄の露出部に細菌感染が起こる。
- 口の症状:歯の根元が炎症を起こして膿がたまる。
- 顔の症状:目の下や頬が腫れる。鼻に通じる管を通って感染・炎症が波及すると鼻が腫れる。目の下に排膿のための穴が自然に開くことも。
- 治療:歯の壊死した部分を除去するか抜歯するなどの歯科手術が必要。
- 留意点:硬いものを噛む癖のある犬(特に大型犬)では歯が折れることが多い。
腫瘍ができているとき
腫瘍にはさまざまなタイプがあり、大きくは良性と悪性に分けられます。
腫瘍化する組織やその部位によっても呼び名は異なってきます。
ここでは顔の腫れに関わる可能性のあるものを説明しましょう。
- 原因:機械的刺激によるものが多い。
- 症状:やわらかい脂肪のかたまりに触れる。可動性がある。
- 治療:大きくなって美容上の問題があったり、機能上の問題が出てくれば切除することも。
- 留意点:大きくなる場合があるので触らないこと。高齢犬に多い。
- 原因:遺伝、免疫力の低下、機械的刺激などが指摘される。
- 腫瘍の種類:良性(エプリス、乳頭腫など)、悪性(メラノーマ、扁平上皮がん、繊維肉腫など)の腫瘍ができる。
- 口の症状:歯石が付いていないのに口臭が強い。歯肉や頬の裏、舌が赤く腫れる。出血がある。
- 顔の症状:頬の裏や歯肉(顎の骨)に腫瘍ができると頬や口のまわりが腫れて見える。口が閉じれなくなることも。
- 治療:切除術。化学療法。放射線療法。
- 留意点:急速に大きくなるものや、転移しやすいものがあるので要注意。観察によって比較的発見しやすい。
- 原因:扁平上皮がん、腺がんである場合が多い。
- 症状:片方から鼻血が出る。鼻に詰まったものを出そうとするようなくしゃみが出る。ヒューヒューという呼吸音がする。
- 治療:切除術。化学療法。放射線療法。
- 留意点:悪性のものである場合が多い。犬が鼻血を出す場合は病気であることが多い。
いかがでしたか?
愛犬の顔が腫れたときは、気になるからといってむやみに触ることは避けましょう。
表層の腫れものは刺激することによって変化したり悪化したりする場合があります。
精密検査をしないと原因が特定できないものです。
自己判断に委ねず、早めに受診しましょう。
この稿が愛犬の健康維持のお役に立てれば幸いです。