犬の腎不全は治る?急性と慢性で異なる症状と治療法は。

腎・泌尿器系の病気は高齢の犬によくみられます。
死因でも、がん、心臓疾患に続いて3番目に位置しています。
特に腎不全は、なかなか症状に気付かず、重篤な状態になりやすい怖い病気です。
腎不全は原因によって3つのタイプに分けられます。
腎前性、腎性、腎後性があり、様々な原因で起こります。
また1週間以内に症状があらわれる「急性」、何年も経ってから症状があらわれる「慢性」の腎不全があります。
これらはどのように違うのでしょうか。
今回は、その特徴や症状、治療法(食事療法)について解説していきましょう。
犬の腎不全の3つのタイプとは?
腎臓の機能のうち75%以上が働かない状態を腎不全と言っています。
腎不全は原因疾患によって3つのタイプに分けることができます。
簡単にまとめてみましょう。
※血液の循環に異常があり、腎臓への血流が低下することが原因。
- 心臓の疾患
- 熱中症
※腎臓のネフロン(血液をろ過するフィルター)が障害を受けることが原因。
- 腎臓結石
- 糸球体腎炎:血液をろ過する器官の炎症
- 腎盂腎炎:尿がいったん集められる器官の炎症
- 毒物(人の薬、毒キノコ、電池の鉛など)の誤食
- 感染症
- 寄生虫
- 腫瘍
- 先天的異常(形成不全)
※尿路(尿管、膀胱、尿道)の問題で尿が正常に排泄されないことが原因。
- 膀胱結石
- 尿道結石
- ミニチュア・シュナウザー
- ミニチュア・ダックスフンド
- トイ・プードル
- ダルメシアン
- ウェルシュ・コーギー
- ヨークシャー・テリア
急性腎不全は治る?慢性腎不全との違いは
原因が起こってから症状があらわれるまでの経過によって「急性」と「慢性」に分けられます。
「急性腎不全」は、原因が起きてから6時間から1週間以内に起きるものとされています。
一方、「慢性腎不全」は、何年もかかって徐々に進行するもの(急性からの移行も)を言います。
急性腎不全は3つのどのタイプでも起きる
急性腎不全は、3つのうち、どのタイプでも起きる能性があります。
特に膀胱、尿道にみられる尿路結石症(尿石症)に代表される腎後性が多いと言われます。
尿路に結石が完全に詰まってしまうと数時間の間に悪化することもあるので要注意です。
しかし一時的に低下した腎機能は治る可能性があります。
早期に処置することで回復させることができると言われています。
この場合、症状が落ち着いた後も慢性腎不全に移行する場合が多いので、投薬や食事療法などの治療は継続されます。
慢性腎不全は腎性のみで起きるもの
そもそも腎臓の機能には余裕があって、100%発揮しなくても役割は果たせると言われます。
ですから悪い状態になってもなかなか症状があらわれないのです。
機能の75%以上が働かなくなる、つまり残った機能が25%未満になると腎不全の状態になります。
また慢性腎不全は、3つのタイプのうち「腎性」のみに起こります。
特に感染症が多く、腎後性の尿道炎、膀胱炎に進行し、腎性の腎盂腎炎、腎炎となるケースが多いとされています。
そして徐々にネフロン(血液をろ過するフィルター)のダメージが進行し、何年も経ってから症状があらわれます。
ダメージを受けたネフロンは回復することがありません。
急性の場合は腎臓が大きく腫れており、慢性の場合は固く縮んでいること(腎硬化症)が多いと言われます。
だから回復不能の部分が75%を超えないうちに処置する必要があるのです。
腎不全が起きるとどうなる?
腎不全が進行すると、体の毒素を尿として排泄できなくなります。
毒素が体に蓄積すると「尿毒症」となり、様々な臓器に影響を及ぼします。
- 食欲低下・体重減少
- 嘔吐・下痢
- アンモニア臭のある口臭
- 貧血・不整脈
- けいれん・昏睡
腎不全の症状と治療は
腎不全の症状と治療法についてまとめてみましょう。
- ぐったりとして元気がなくなる
- 多飲・多尿(初期):体重1㎏あたり飲水量が100ml以上、尿量が50ml以上で多飲・多尿
- 尿量が減少する・出なくなる(尿路結石症)
- 嘔吐・下痢
- 脱水
- 尿毒症
【治療法】
- 輸液(脱水の場合)
- 結石の除去
- 毒物の解毒処置
- 抗生物質(感染症の場合)
- 食事療法(慢性腎不全の場合)と投薬
- 人工透析:コストが高く、長時間管でつなぐため困難なことが多い
これらの症状の中で、「嘔吐・下痢」は他の病気でもよく起こる症状ですので判別が必要です。
慢性腎不全の食事療法はたんぱく質と塩分がポイント
腎臓は体の老廃物を処理しますが、この老廃物は主にたんぱく質が分解されたものです。
ですから摂取されるたんぱく質が多いと、老廃物も多くなり、結果として腎臓に負担をかけることになるのです。
また塩分が多くなると、血液中の水分が多くなり、血液量が増えます。
すると血圧が上がり、腎臓にかかる圧力が大きくなり、負担をかける原因になってしまいます。
よって腎臓に負担をかける「たんぱく質」と「塩分」を控えた腎臓病用の治療食に切り替えなければなりません。
急性腎不全は、早期発見・早期治療により、回復する可能性があります。
一方、慢性腎不全は、完治させることはできません。
しかし早期に発見し、進行を遅らせ、良い状態を保つケアはできるのです。
いかがでしたか?
この稿が愛犬の健康維持のお役に立てれば幸いです。