犬のお腹が張っているときに考えられること。キュルキュル鳴るのは異常?

愛犬のお腹が張っている?
膨らんできた?
一体どんなことが起こっているのでしょう。
キュルキュル、ゴロゴロ鳴るのは異常かも。
何らかの異変に気付いたらあらゆる可能性を考えてみましょう。
今回は犬のお腹の異常にまつわるさまざまな疑問にお答えします!
犬のお腹が張っているときに考えられること
お腹が張っている(膨らんでいる)ように見えるときは、全体のバランスをよく見てみましょう。
単なる肥満なら全体的に太るので、首や背中、お尻にも脂肪がついているはず。
いつも観察している飼い主さんなら急に気になるということはないでしょう。
問題はお腹だけが膨らんできた場合なんです。
お腹だけが膨らむ場合は病気?
食べすぎや運動不足による肥満ではなく、内臓に問題がある場合を考えてみましょう。
- 副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群):腹部が垂れ下がった状態になる。
- 甲状腺機能低下症:脂肪肝によって肝臓が大きくなることがある。
- 腫瘍:腹水がたまって徐々に膨らんでくる。
- 肝炎:腹水がたまって徐々に膨らんでくる。
- 妊娠・偽妊娠:乳房やお腹が大きくなる。
- 子宮蓄膿症:子宮内膜が腫れたり、炎症によってウミがたまってくる。
異常な膨らみの見分け方は?
まずは犬の背骨や腰骨を触ってみましょう。
単なる肥満の場合、全体的に脂肪がついているので背骨や腰骨がはっきりせず、骨の出っ張りが確認できないでしょう。
でも内臓に原因がある場合は、お腹だけが張っている(膨らんでいる)ので骨の出っ張りが分かるはずです。
では腹水がたまっている場合はどうでしょう。
犬を2本足で立たせてみて、お腹だけが垂れ下がるようなら腹水の可能性がありますよ。
お腹を触ったり、軽く叩いてみましょう。
腹水なら、水風船のような感覚があったり、ポチャポチャと音が聞こえることもあります。
では、あらためてそれぞれの病気について解説しましょう。
副腎皮質機能亢進症はメスの高齢犬に多い
「副腎皮質機能亢進症」は、メスの高齢犬がかかりやすい病気です。
犬種ではプードルやダックスフント、ポメラニアンに多いと言われています。
腎臓の少し上にある副腎から出される糖質コルチコイド(コルチゾールが代表)の過剰分泌によるものです。
少しややこしいですが、副腎そのものの異常と糖質コルチコイドの分泌を促す脳の下垂体の異常によるものがあります。
また皮膚炎やアレルギー性疾患の治療で用いているステロイド剤(抗炎症作用、免疫抑制作用)の過剰投与が原因になることもありますよ。
これはいわゆるステロイド剤が、糖質コルチコイドを配合して作った薬だからなんです。
糖質コルチコイドが過剰になると以下のような症状が引き起こされます。
- ホルモン性の肥満:栄養素を分解できなくなるためお腹(腰のまわり)に脂肪がつきやすくなる。
- 左右対称の脱毛(腰部):皮膚の萎縮・乾燥による脱毛(脱毛後は皮膚が黒ずむ)がみられる。
- 脱力:筋肉中のたんぱく質が分解されて委縮しするため足腰が弱くなる。
- お腹の垂れ下がり:腹筋が萎縮して弱くなる。
- 多食:食欲中枢が刺激される。
- 多飲多尿:抗利尿ホルモンの働きが弱くなる(糖尿病の合併によることも)。
- 糖尿病の合併:高血糖状態におかれる。
- 感染症:免疫力が低下する。
治療は、副腎にできた腫瘍の摘出手術や化学療法、薬剤による副腎皮質の抑制、ステロイド剤の調整などが行われます。
ステロイド剤の過剰投与については、飼い主が頻繁に病院を変えることで陥りやすいと言われていますので注意が必要です。
甲状腺機能低下症は高齢の大型犬に多い
「甲状腺機能低下症」は、8歳以上の高齢の大型犬がかかりやすい病気です。
犬種ではゴールデンレトリバーやドーベルマン、ボクサーに多いと言われています。
のどのすぐ後ろにある甲状腺から出るホルモンの分泌低下によるものです。
甲状腺ホルモンは、新陳代謝の促進が主な役割であるため、低下すると以下のような症状が引き起こされます。
- ホルモン性の肥満:栄養素を分解できなくなるため脂肪がつきやすくなる。
- 肝臓が腫れる:糖分が利用できなくなり肝臓に脂肪が蓄積する。
- 左右対称の脱毛(お尻からしっぽ):新陳代謝が悪くなり皮膚が乾燥する。
- 毛艶が悪くなる
- 元気がなくなる
- 寒さに弱くなる
- ケガや炎症が治りにくくなる
治療は、甲状腺ホルモンの投与が行われます。
腹水がたまる原因は?
お腹だけが徐々に膨らんできた場合は「腹水」がたまっている可能性がありますよ。
腹水は、「腫瘍や炎症(腹膜炎など)」の部分から体液がにじみ出る場合(浸出液)と血管から漏れ出る場合(漏出液)がありますね。
血管から漏れ出る場合は、低タンパク血症といって、「肝炎」などが原因で血液中のたんぱく質(アルブミン)が減ることで起こります。
アルブミンが血液中の水分を血管内にとどめているからなんですね。
偽妊娠や子宮蓄膿症は不妊手術を受けていないメスがなりやすい
「偽妊娠」は、妊娠していないのに乳房が大きくなったり、子宮が拡張して脂肪がつくことで、まるで妊娠しているように見える状態です。
黄体ホルモンの関係で起こるとされ、繰り返すと乳腺や子宮の病気にかかりやすくなると言われます。
「子宮蓄膿症」は、子宮の中にウミがたまる病気で、避妊(不妊)手術を受けていない出産経験のない犬に多いと言われています。
妊娠しないまま発情を繰り返すことが原因で、子宮内膜が慢性的に増殖し、炎症が起こりやすくなるんですね。
雑菌の繁殖が起こるとウミがどんどんたまっていってしまうんです。
ニオイのあるクリーム色のウミが外に出てくる「開放型」と出てこない「閉鎖型(貯留型)」に分けられます。
このうち閉鎖型ではお腹が膨れてくるのが特徴です。
いずれのタイプにしても、ウミが出す毒素によって腎臓の機能が低下し、脱水が起こるため多飲多尿の症状が出てきます。
また発熱や食欲不振、脱毛、嘔吐などの症状も見られます。
治療が遅れると多臓器不全を起こす可能性もあるので早期発見がとても重要です。
これらの病気は、避妊(不妊)手術を受けることで予防ができます。
交配の予定がない場合は手術を行うのも一つの方法かもしれません。
お腹が張って、キュルキュル、ゴロゴロ鳴るときは異常?
続いてお腹が張って「キュルキュル」「ゴロゴロ」鳴るときの原因について考えてみましょう。
先ほどお話ししたお腹の脂肪や臓器の肥大、腹水などとは様子が異なります。
お腹(胃腸)にガスが溜まっていることが考えられますよ。
- 鼓腸症
- 胃拡張と胃捻転(鼓腸症と総称されることもある)
- 吸収不良症候群
- ストレスなどが原因で胃腸の働きが弱ったり過敏になったりする場合
鼓腸症は腸にガスがたまる病気
「鼓腸症」は、お腹が鳴るほかに「げっぷ」や「おなら」が多くなったり、嘔吐や下痢を伴うこともあります。
腸内細菌のバランスが悪く、悪玉菌が増えることによってもガスが発生することが多いようです。
フードが合わないことが原因かもしれません。
与えている食物繊維が多すぎる(大豆、ふすま、ビートバルブなど)ことも考えられます。
獣医師とも相談してフードを選択してみましょう。
自己判断でフードをコロコロ変えすぎるとかえって消化不良の元になるので注意しましょう。
一方、「呑気症」といって、大食いや早食いによって、空気も一緒に吞み込むことで起こる場合もありますよ。
この場合、早食いできないようなデザインの食器に変えたり、少量ずつ与えてみるのもよいでしょう。
胃拡張と胃捻転は緊急の対処が必要
「胃拡張」と「胃捻転」は、グレート・デン、シェパード、ドーベルマンなどの大型犬に多いと言われています。
「胃拡張」は、食後すぐに大量の水を飲んだり、激しい運動をすることで胃の中に急激にガスがたまってしまう病気です。
一方、「胃捻転」は、胃がパンパンに膨れて、入口の噴門部や出口の幽門部で捻じれてしまう病気です。
吐く様子を見せても吐けないのが特徴です。
口から管を通してガスを抜いたり、捻転の状態によっては手術が必要になる重篤な症状です。
急激にお腹が膨れて苦しむ様子が見られたら急いで病院に連れて行きましょう。
吸収不良症候群は小腸の下痢?
「吸収不良症候群」は、栄養を吸収するべき小腸の粘膜に障害が起こる病気です。
小腸性の下痢を起こし、栄養失調になってしまうため、だんだん痩せてくるのが特徴です。
最初は栄養を補うためにかえって食欲旺盛となり、とても元気に見えることから注意が必要ですね。
下痢や軟便、脂肪便(白っぽい)が見られたら、進行している可能性があります。
見逃さないようにしましょう。
ストレスが原因で胃腸の症状が出ることも
最後は「ストレス」が原因になる場合です。
犬はとても繊細な生き物。
飼い主さんとの関係や周りの環境によって大きく影響を受けてしまいます。
ストレスが原因となって胃腸に症状が出ることは珍しいことではありませんよ。
胃腸の働きが悪くなったり、逆に過敏になったりもします。
最近では犬でも「過敏性腸症候群」になり、腸にガスがたまったり、下痢と便秘を繰り返す症状を見せることがあります。
原因がストレスである場合、薬やフードだけでは治りません。
思い当たることがあったら、原因を取り除くことを考えなければなりません。
いかがでしたか?
今回は、腹が張ってくる症状に注目してお話ししてきました。
愛犬の異変に気付き、少しでも早く適切な対処が行われることを願っています。
本稿が参考になれば幸いです。