猫の病気。腎不全で余命を伸ばす治療方法と食事の工夫とは?

猫の病気の中でも腎不全は高齢猫がかかりやすい病気ですね。
加齢に伴って徐々に進行する慢性のもの、中毒や感染、腫瘍のほか尿路結石などが原因の急性のものがあります。
今回は、腎不全という病態に焦点を当て、愛猫の余命を伸ばす治療方法や食事の工夫を一緒にみていきましょう。
高齢猫に多い慢性腎不全はどんな病気?
加齢により腎臓の機能が徐々に低下していくことで起こると言われています。
死因の中でももっとも多いことでも知られていますね。
そもそも腎不全とはどういう病態なのでしょうか?
元々腎臓の機能には余裕があり、少し悪くなった程度で症状は出ません。
その2/3(初期)から3/4(進行期)以上の機能が停止してしまった状態を「腎不全」と呼んでいます。
高齢の猫に多いのが「慢性腎不全」で、腎臓が硬く縮んで尿を作る機能が低下(間質性腎炎など)し、数年にわたって進行していきます。
また尿路結石(尿石)症に代表される「猫下部尿路症候群」になった猫はかかりやすいと言われています。
- 色の薄い尿が大量に出る(多尿)
- 水分を補うために大量に水を飲む(多飲)
- 数ヵ月にわたる食欲低下・体重減少
- 活動性の低下(元気がなくなる、疲れやすくなる)
- 毛づやが悪くなる(栄養低下で毛割れがみられる)
- 傷が治りにくい(栄養低下のため)
- 浮腫(水分が排出できない)
- 貧血(消化器の出血、エリスロポエチン・ホルモンの低下)
- アビシニアン
- メインクーン
- シャム
- ロシアンブルー
高齢猫の場合、食欲不振や体重減少、活動性の低下があっても異常とは思わず、老化によるものか、腎不全によるものか分かりにくいことから発見が遅れがちです。
この慢性腎不全が続くと「尿毒症」となり、老廃物(尿素、窒素など)を体外に排出できなくなります。
他の臓器にも影響を与え、嘔吐、下痢、口内潰瘍などが見られ、末期には、けいれん・昏睡などの神経症状があらわれ、とても危険な状態に陥ってしまいます。
尿毒症は、腎不全の病態によく似た「糸球体腎炎」や尿路結石症(猫下部尿路症候群)でも起こりうるものです。
- 猫白血病ウィルス感染症:免疫力が低下し、白血病やリンパ腫に進行する。
- 猫エイズウィルス感染症:免疫力が低下し、様々な病気(鼻炎、結膜炎、下痢)が回復しなくなる。
- 猫伝染性腹膜炎(コロナウィルス):腹水や胸水(ウェット)、発熱や体重減少(ドライ)が特徴。
腎機能は回復させることが困難であるため、早期の変化を見逃さないことが何よりも重要です。
これらの症状がみられたらすぐに病院に連れて行きましょう。
急激に進行する急性腎不全とは
急性腎不全では、様々な原因が考えられ、数時間から数日で腎臓の機能が低下するとてもおそろしい病態です。
突然元気がなくなり、尿量の減少や尿閉(まったく出なくなる)、嘔吐、脱水、低体温、アンモニア臭(窒素性老廃物)の口臭などの症状が見られます。
また体内に毒素が蓄積する尿毒症へと進行する場合があります。
急性腎不全は、3つのタイプに分かれそれぞれ原因が異なります。
- 腎前性:腎臓より前の心臓の機能不全によって血液量が減るために発症する
- 腎性:腎臓そのものが中毒や感染、腫瘍、外傷などでダメージを受けることで発症する
- 腎後性:腎臓の後の尿路に尿石ができるなどして尿が排泄できないことで発症する
症状が軽い場合、治療すれば回復する可能性もあります。
原因を特定し、原疾患の治療を行わなければなりません。
これらの場合、素人の判断は危険ですので、一刻も早く獣医師の診察を受けましょう。
余命を伸ばす治療方法と食事の工夫とは
腎臓はダメージを受けると回復が難しい臓器です。
しかしできるだけ進行を遅らせ、症状を緩和し、余命を伸ばす方法はないのでしょうか?
ここでは、慢性腎不全の治療と飼い主ができる工夫についてお話ししましょう。
病院での治療では、進行を遅らせ(悪化因子を取り除く)、症状を緩和するための対症療法や食事療法が行われます。
- 毒素の吸着:経口吸着剤療法
- 腎臓の炎症を遅らせるN-3脂肪酸療法
- 高血圧:降圧剤
- 脱水:輸液とカリウムの補充(低カリウム血症の予防)
- 食欲低下:経腸チューブ療法、ビタミン療法、抗セロトニン療法
- タンパク尿:ACE阻害薬
- 貧血:エリスロポエチン(ホルモン)療法、輸血
- 利尿作用の低下:ドーパミン療法
- 低カルシウム血症:カルシトロール(ホルモン)療法
- 感染:抗生物質
- 気分の安定:精神安定剤、アミトリプチリン療法
- 食事療法
- 新鮮な水を常に飲めるようにしておく
- なるべく水分を飲ませる機会をつくる
- たんぱく質を控える(獣医師と相談の上)
- N-3脂肪酸を含んだ食事を与える(獣医師と相談の上)
- ナトリウムを控える(獣医師と相談の上)
- 慢性腎不全用の療養食(リン、たんぱく質、w-3不飽和脂肪酸などを調整)を与える
- ストレス(悪化因子)を取り除く
- 睡眠と休息の時間を確保する
- トイレを清潔に保ち我慢させない
- 慣れた使いやすいトイレを用いる
- ブラッシングを小まめに行う(皮膚の血行促進)
このように獣医師の治療のほか、飼い主さんができる工夫もたくさんあります。
また最近では東京大学の研究チームが、猫の腎不全に「血中タンパク質AIM」が関与していることを突き止めたことが話題となりました。
さらに東レが猫の慢性腎臓病治療薬として開発した「ラプロス(R)2017年4月発売予定」が注目を集めていますね。
これら愛猫家にとっての朗報が続いています。
猫の腎不全は必ずしも悲観するものではないのかもしれません。
獣医師と相談しながら、あきらめずに対処していきましょう。